◉プロジェクトの概要
ソミックでは、「働くことの意味」や「製造業が根づく浜松、遠州地域の魅力」などを伝え、地域の子どもたちに未来を考えるきっかけをつくるための、職業講話を実施しています。この活動は、地域社会におけるグループの認知度を上げるといったことを超えて、子どもたちの地場産業への誇りを育み、また私たちにとっても、仕事の意味を再認識し、生まれ育った地域への誇りを持つきっかけになっています。
◉この記事のポイント
- 地元に長く根づく企業が、地域の未来に対してできること。
- 子どもたちとの関わりの中で、自分たち自身の仕事の意味が見えてくる。
- 自分たちの仕事について人に語ることは、働く誇りを高めるきっかけになる。
◉この記事の見出し
- 何を伝えられるだろうか。何を伝えるべきだろうか
- 手探りの末に辿りついた、二つのテーマ
- 子どもたちの声が、社内に誇りを育んでくれたら
◉プロジェクトチーム
グローバル経営変革推進部 コミュニケーション推進室
「コミュニケーション」を軸に、社内外にむけた広報、社会貢献・地域共創活動、イベントなど、ソミックグループの認知度・好感度向上や社員のエンゲージメント向上につながる施策を展開している。
◉パートナー
小中学校への「職業講話」でキャリア授業を支援するパートナー
何を伝えられるだろうか。何を伝えるべきだろうか
ソミックでは、地域の小中学校の生徒に向けた「職業講話」を実施しています。この取り組みは、単に生徒たちにグループのことを知ってもらうためのものではありません。そこには、一人ひとりの生徒が自分の将来像を描くきっかけになれば、という想い、そして、地域に深く根ざす企業として、地域の産業と生徒たちの未来の可能性をつなぎ、地域社会や地域産業の持続可能性に貢献していきたいという想いがあります。
職業講話がはじまったきっかけは、コロナ禍でした。それまで、私たちは工場見学というかたちで子どもたちに職場体験の場をつくっていましたが、コロナ禍以降、来てもらうのではなく、自ら出向き、子どもたちとコミュニケーションをとりながら、働くことの意味やおもしろさを伝えようと考えました。

実際の工場見学の様子
社会にはさまざまな仕事や働き方があるということを伝える職業講話では、多くの場合、たとえば、シェフや書道家など、個人で活躍しているような方々にスポットライトが当たります。一方、私たちが企業人として何かを伝えていくのであれば、やはり企業ならではの特色が出るプログラムにしたい。そのようなことを考えながら、手探りでプログラムをつくっていきました。
はじめて実施した講話では「チームワーク」をテーマに、営業部や設計部、総務部、工場の現場で働いている社員たちをオンラインでつなぎ、それぞれの役割を紹介しながら、一人ひとり異なる仕事をしながらも、みんながチームとして、ひとつの製品をつくっているんだということを、仕事の過程に沿って丁寧に伝えました。このプログラムは仕事内容を伝えるだけではなく、結果的に「働くことの意義」を伝えるものとなり、学校側からも高い評価をいただき、以降、多くのご相談を受けるようになりました。
手探りの末に辿りついた、二つのテーマ
職業講話の回数が飛躍的に増えていった背景には、「つながるプロジェクト」の方々との協力関係がありました。彼らは若年層の就業観や地方離れに問題意識を持つ一般社団法人です。「子どもたちが夢を描ける社会に」というミッションを掲げ、学校・地域と連携しながら、企業と共に義務教育をより実り豊かなものにしていく活動を行っています。ソミックグループのパーパス「次世代へ笑顔をつなぐ」との共鳴を感じた私たちは、彼らとの協力関係を通じて、職業講話を継続的かつ、定期的に実施できる体制づくりをしていきました。
回を重ねていく過程で、私たちのなかで、伝えるべきことが少しずつ明確になっていきました。もともとは私たち自身の仕事内容や、チームワークの大切さに焦点を当てていましたが、それに加えて、日本有数の製造業の集積地である浜松、ひいては遠州という地域の魅力を伝えることに、この場の意味があると考えたのです。というのも、他の地方都市同様に、仕事の多い浜松ですら、若者が流出していっているという現状があります。私たちは、その原因のひとつとして「地元にどんな仕事があるのか」「その仕事が、社会のなかでどんな役割を果たしているのか」ということを知らないからではないか、と考えています。だからこそ、私たちが率先して、自分たちのことだけではなく、地域産業のすばらしさや製造業が社会で果たす役割、その重要性を伝えることによって、子どもたちが地元のことを十分に理解したうえで、仕事を選ぶ未来をつくれないか、あるいは「ここから早く出ていきたい」ではなく「ここでずっと暮らし続けたい」という未来をつくれないか、と思っています。

今、私たちが伝えているテーマは二つあります。
ひとつは、地域に暮らす子どもたちに、地域の大切な産業である自動車部品産業について知ってもらうこと。自動車には約3万点の部品が使われており、浜松には部品メーカーが400社以上もあるのです。そんな浜松のたくさんの企業がそれぞれの役割を果たし、協力することで、世界中を走り回る一台の自動車が作られているのだということを伝えたい。そういった地域産業に対する理解は、子どもたちの地域に対する理解を育み、いつかきっと、地域への誇りに育っていくはずだと信じています。
もうひとつは、私たちが日々つくっているものが、単なる一つの部品ではなく、「命を守る部品」だということ。ここには、私たち自身の発見があります。もともとは「自動車の足回り部品をつくっている」と伝えていたのですが、説明を繰り返すうちに、「わたしたちは命を守る部品をつくっているのだ」というメッセージに変わっていきました。それは、子どもたちに伝え、子どもたちから寄せられる声を通じて、私たち自身も、自分たちの仕事の意味や意義を捉え直すことができた結果だと思っています。
子どもたちの声が、社内に誇りを育んでくれたら
これまでに、約2,600人の子どもたちが職業講話を受け、たくさんの感想が寄せられました。そこには、子どもたちらしい率直さで「命を守る製品をつくるって、すごい」「そんな部品をつくっているソミックのみなさんはすごいと思う」といった声が書かれています。それらは、私たちにとってかけがえのない大切な財産です。

ソミックのもとへ届いた感想の一部
子どもたちから寄せられたこの声を、もっとグループ全体に届けたい。そう考えて、コミュニケーション推進室では、感想をPDFにしてアーカイブ化し、全社に発信することで、誰もが子どもたちの感想に触れられるようにしました。すると、そんな感想を読んだ社員たちからは、「自分たちの経験や仕事が子どもたちの心を動かすことがあるんだ」といった、喜びの声も上がるようになりました。
職業講話という場は、私たちにとっては当たり前の仕事も、子どもたちという他者の目に触れることで肯定されること。そして、肯定されることで、私たち自身にも誇りが芽生えるということを、気づかせてくれました。私たちはこれからも職業講話を通じて、子どもたちの心に、製造業で働くことの意義深さを伝えつづけ、地域への誇りを醸成できるように努力を重ねていきたい。そして、子どもたちが自分の生まれ育った町で働きたいという気持ちを育んでいく。それは、ソミックが地域に根ざす企業として、事業以外のかたちで、地域社会や地域産業に価値を生み出すために必要なことだと、私たちは信じています。