2025.9.1

集まれ、遠州の子どもたち! 未来をつくる価値を生み出す、 BE CREATIVE! ENSHU

#生きがい・働きがいの未来 #機会格差是正 #コミュニティの未来
◉この記事の概要

2024年度にスタートした、遠州の中高生を対象とする校外プログラム「BE CREATIVE! ENSHU」。これは首都圏と地域の機会格差を解消し、「価値創造」という選択肢を子どもたちの身近にしながらコミュニティづくりにまでつなげていく参加費無料のプログラムです。子どもの成長を長期に渡って支えながら、遠州から地域、日本、そして世界で価値を生み出す人材の輩出へ。プロジェクトの発起人であるソミックマネージメントホールディングスの石川彰吾副社長と、企画・集客・運営に携わったコミュニケーション推進室の村山さんに壮大な構想を背景からお聞きします。

 

 

◉この記事の見出し
  • 「はじめまして」から始まる、白熱の二日間!
  • 都市部との教育格差に、一石を投じるには?
  • 新しい価値を生み出せるのは、才能のある人だけ、じゃない
  • 「校長先生!昨日、すっごく楽しかったです!」
  • コミュニティを生み出すことで、365日が変わる

 

 

◉お話を聞いた人

 

石川彰吾(いしかわ しょうご)

(株)ソミックマネージメントホールディングス取締役副社長、(株)ソミック石川取締役副社長、(株)ソミックトランスフォーメーション共同代表取締役。2023年より現職。ソミックグループの数々の改革を牽引している。

村山祐子(むらやま ゆうこ)

(株)ソミックマネージメントホールディングス グローバル経営変革推進部 コミュニケーション推進室室長。1991年入社。2020年より現職。「コミュニケーション推進」を軸に広報・地域共創・インナー施策などのブランディングを担う。

「はじめまして」から始まる、白熱の二日間!

 

2024年12月。N1 labの一室に約20人の中高生が集まり、大学生・社会人を交えて熱いディスカッションを行っています。

 

 

 

 

彼らが取り組んでいるテーマは、「戻ってきたくなる『まち』のデザイン」。地元を離れた若者が大学卒業後、もしくは就職して数年後に戻ってきたくなるのはどんな「まち」なのか、中高生・大学生・社会人がそれぞれの視点から意見を出し合います。チームごとに練り上げた渾身のアイデアは、二日目に発表・審査!

 

 

 

 

村山さん
発表を見て驚きました。彼らが見出した課題やその解決法が、私たちが仕事で新規事業を考える際に持っている視点ととても似通っていたんです。
彰吾さん
子どもたちからこういうアイデアが出てくるのが本当にすごい。子どもの方がむしろ本質に近いのではないかとすら思いました。

 

 

これは、2024年度から始まったプログラム「BE CREATIVE! ENSHU」の、全三回あるプログラムのうち第二回目における一幕。一般社団法人CREATION DRIVEとソミックグループが協働で、遠州の子どもたちに創造力を発揮しながら自分たちで新たな価値を生み出す機会、そしてそれに対する意欲や自信を届けることを目指してスタートしました。

 

 

都市部との教育格差に、一石を投じるには?

 

彰吾さんとCREATION DRIVEの出会いは2023年に遡ります。新規事業関連で協働している会社に、「子どもたちとの学びを通して未来をつくろうとしている団体がある」と教えてもらい、感銘を受けたのがきっかけでした。

 

 

彰吾さん
素晴らしいなと思ったんです。CREATION DRIVEとコラボレーションすることで、当社も何かこの地域の子どもたちのためになることができるのではないかとすぐに考えました。というのも、私はかねてより都市部と地方の子どもの教育環境や情報の格差は直視すべき課題の一つだと捉えていて。遠州に根付く100年企業として、また一人の人間として、少しでもこの現状を変えられないだろうかと思っていたのです。

 

 

実は、CREATION DRIVEの方でも、これまで都市部の子どもたちにしかプログラムを提供できてこなかったことを課題に感じ、地方開催の道を模索していたところでした。双方の想いはすぐにマッチ!早速プログラムの詳細を詰め、それと並行して日程を決めて集客に着手しました。

 

 

村山さん
集客にあたっては、どうやって地域の子どもたちに情報を届けるかから難問でした。学校の管轄はいくつにも分かれているので、一括で案内するのは不可能。学校にチラシやファックスを送ったとしても必ず目を通してもらえるわけではありません。職業講話や採用を通じてつながりのある学校には訪問の際に直接プログラムをご説明し、磐田市の高校は市役所の方と全校回るなど、とにかく一校一校地道にご案内を続けましたね。

 

 

新しい価値を生み出せるのは、才能のある人だけ、じゃない

 

BE CREATIVE! ENSHUのプログラムの中心にあるのは「価値創造」。デザイン思考*を活用してアイデアを創造したり、地域の課題を解決したりと、何か新しいもの・ことを生み出すことに挑戦する内容となっています。

 

 

 

 

*デザイン思考…新たな製品やサービス、事業を生み出すための考え方の1つ。「ユーザー1人ひとりの生活や価値観をふかく理解して新しい価値につながるヒントをつかむこと」「提供したいユーザー体験を再現するプロトタイプをつくってアイデアの価値をたしかめること」が特徴。

 

 

彰吾さん
戦後、いろんな物資が不足していたような時代には、一つのもの(=解決策)で多くの人を幸せにできたかもしれません。ですが今は問題自体が多様化しているので、一つの解決策ではカバーできる範囲が狭く、それゆえ意思決定も難しくなっている。だからこそ、いろんな人がそれぞれの立場から価値を生み出せる社会にすることで、“大きな解”ではカバーできなかった問題をどんどん解決していくのが大事だと思ったんです。

 

 

“新しい価値を生み出しているのは、才能のある人だ”という固定観念を壊し、“作法を学べば、自分でも新しい価値を生み出せる”というマインドを醸成するのもプログラムの狙いの一つです。

 

 

彰吾さん
最初は、デザイン思考を学んで何か作り出すだなんて、難しいこと、特別な人だけができることだと思うかもしれません。でも、『やってみたら意外と自分にもできた!』とプログラムで体験できる。しかも、それを普段関わることのない違う学校の子たちや、世代の違う子たちとやったことが、人生が変わるぐらい楽しかったり、この先の人生を考えるきっかけになったり、視点がバッと広がる機会になったりする。同時に、そんなふうに目を輝かせながら、ぐんぐん吸収していく子どもたちを当社の社員が目の当たりにすることの意義も、とても大きいと思うんですよね。子どもたちを見ることで、改めて自分はどうあるべきかを考えるでしょうから。

 

 

「校長先生!昨日、すっごく楽しかったです!」

 

満を持して開催された、11月の第一回。「“新しい暮らしのあたりまえ”をデザインする」というテーマに対し、自分たちのアイデアからプロトタイプをつくり、プレゼンにまで挑戦しました。

 

 

村山さん
事前に東京のプログラムを視察に行ったとき、集まっている子たちの積極性がものすごいなと思ったんです。初対面の大人にもぐいぐい質問をするさまに、さすが、こうしたプログラムを自ら探して集まってくるだけあるなぁと感心しました。一方、これを人口のパイの小さい遠州地域で行った時に、どういう子たちがどれくらい集まり、どんな空間をつくっていくのか?……正直不安もあったんです。でもやってみてわかったのは“東京も遠州も、何も変わらない!”ということ。東京の子に比べれば少し真面目でおとなしい印象はあったものの、プログラムに取り組む姿勢もアウトプットも全く引けを取りませんでした。

 

 

 

 

11月の第一回も、12月の第二回も、参加者からの反応は上々。初日が終わってすぐ、参加した子のお母さんから「家に帰ってくるなり『これが楽しかった、あれが楽しかった!今度こういうことをやりたい』と熱心に話してきます!」と彰吾さんにメッセージが届いたり、プログラム翌日の月曜、学校の校長室に子どもたちが駆け込んでいき「すっごく楽しかった!」と校長先生に報告したりと、遠州の至る所に熱気が広がる手応えを得ました。

 

 

彰吾さん
初年度で、認知もない中での開催でしたが、これが広がってくると『行かなきゃ損だ』と思ってもらえるようになると思うんです。そうしたら参加者の前のめり度ももっと上がるでしょう。ただ、今回は第一期にしか味わえない空気があったのが私はすごく大事なことだと思っていて。『よくわからないけれど、面白そうだから行ってみよう』と思ってくれる人が集まって、主催者の我々も含めてお互いに手探りで進む時間の中でしか得られない新鮮な体験があったと思います。

 

 

コミュニティを生み出すことで、365日が変わる

 

2025年3月、BE CREATIVE! ENSHU第三回。SOMIC N1 lab Iwataの4階は、またしても大勢の中高生、大学生、社会人で賑わっていました。

 

 

彰吾さん
第三回は、過去のプログラムに参加した中高生とプログラムに関わった社会人が集い、世代を超えてつながるコミュニティイベントです。同世代と刺激し合うのはもちろん、進路やキャリアの選択肢を広げる機会にもしてほしくて、高校生や社会人にピッチ*をしてもらう時間を設けています。

*短い時間で自社(ないしは自分)のアイデアやビジネスプランを相手に伝えるプレゼンテーションのこと

 

 

三回目をコミュニティイベントにした背景には、これまでソミックが職業講話など様々な形で子どもたちと関わる中で見えてきた課題意識がありました。

 

 

 

 

彰吾さん
職業講話はとても価値ある取り組みです。が、365日のうちのたった1日、キャリアに関する話を聞く機会があることに加え、残りの364日をどう生きるかに作用するものも必要だという思いがあったんです。364/365を変えるもの、その答えの一つが『コミュニティをつくる』でした。私たちは、第三回のような機会を繰り返し設けていくことで、都市部に進学したプログラム受講生がまたメンターとして戻ってきてくれたり、卒業後にUターンするきっかけになったりしながら、このコミュニティが持続することを目指しています。その先で、地域が本当に変わっていくのだと信じています。
村山さん
今後は遠州地域の他の企業もBE CREATIVE! ENSHUにどんどん参画していただきたいと思っているんです。例えば今はどこの企業も採用難ですし、小中学生のうちから子どもたちと接点を持ちたい企業は山ほどあると思います。そうした動機を起点に、子どもたちに価値ある体験を届ける取り組みを一緒につくれれば、と!
彰吾さん
そうそう、ソミックだけのものだなんて全然思っていないんですよ。みんなでやって、みんなで広げることが本当に大切で、まさに価値ってそうやって創られてきたものだと思うんですよね。何が言いたいかって、『一緒に楽しく未来をつくりませんか?』です!

 

 

そろそろ二期目に入り、本格的にコミュニティづくりが動いていくBE CREATIVE! ENSHU。志を共にする仲間は随時募集中です。遠州の子どもたちから始まるワクワクの未来、一緒につくってみませんか?集まれ、遠州の子どもたち、そして遠州の大人たち!