2025.9.1

設計&カメラマン。 二刀流から見つかった、 自分らしい働き方

#生きがい・働きがいの未来 #製造業における新しい働き方づくり
◉この記事の概要

ソミックで生産設備の電気設計の仕事に就く傍ら、兼業副業制度を利用してフリーランスのカメラマンをしている松井さん。かたや機械、かたや対人。かたや組織、かたや個人と、全く違うタイプの仕事にイキイキと取り組んでいます。しかし今の充実した日々に至るまでは、悩みや紆余曲折もあったそうです。副業をしたから得た気づき、深掘りできた「自分と仕事」の関係性を、松井さんの言葉で振り返ります。

 

 

◉この記事の見出し
  • 副業禁止の定義はなんだ?
  • 膝ガクガクのカメラマンデビュー!
  • 副業をしてわかったのは、「会社ってありがたい!」
  • 距離や形を変えながら見つける、自分と仕事の関係性
  • 副業可は職業選択の自由につながる

 

 

◉お話を聞いた人

 

松井一貴(まつい かずき)

㈱ソミック石川 生技開発部設備技術室。2006年入社。副業でフリーランスのカメラマンとしても活動している。

副業禁止の、定義はなんだ?

 

ソミックで働きながら、現在副業でフリーランスのカメラマンをしている松井さん。写真に興味を持ったきっかけは、2014年、お子さんが産まれたことだったそうです。

 

 

 

 

松井さん
子どもが生まれると誰でもちょっと写真に興味持つじゃないですか。当時も携帯で一応は撮れましたが、画質が良くなく、もうちょっとちゃんとしたカメラで撮りたいなと。それで一眼レフカメラを買ったら、完全にハマりました。仕上がりが段違いだったんです。

 

 

最初は自分の子どもだけを撮っていた松井さんですが、徐々に身近な人にも撮影の範囲を拡大。撮った写真を本人に見せて、喜ばれることがやりがいになったそうです。そして、漠然と「カメラを仕事にしたい」と思うように。しかし当時はまだ兼業副業制度はありませんでした。

 

松井さん
「ただ、制度で禁止されている副業って何を指すんだろう?と思っていました。副業と一口に言っても、別の組織に雇われて行う副業もあれば、自分のハンドメイド品を売ったりYouTuberをしたり個人でできる副業もあるわけで、そういうものも禁止されている副業にあたるのかな?と。時代は変わっているのに、制度は昔のまま動かずにいるような、そんなもどかしさを感じていました。」

 

 

2022年、制度が導入されると早速カメラマン業を始めます。

 

 

膝ガクガクのカメラマンデビュー!

 

最初のお客さんからの依頼は、結婚式の二次会の撮影。膝をガクガクさせるほど緊張しながら挑んだといいます。

 

 

松井さん
カメラマンと依頼者をつなぐマッチングサイト経由で依頼をくれた、全く初対面の新婚カップルでした。なんとかやり切りましたが、あの撮影が結局成功だったか失敗だったか、実は今もわかりません。というのも特に依頼主からのリアクションがなかったもので……(苦笑)

 

 

若干不安の残るスタートを切ったものの、その後、七五三の時期を中心に時折依頼が入るように。撮影は土日、または有給を使って行い、編集・レタッチは早起きをして明け方に行うのが常だそうです。

 

 

松井さん
夜は子どもの寝かしつけがあるんで、できないんですよね。土日も両方撮影にすると家族があまり良い顔をしません。ただ、カメラマンの仕事自体は家計の足しになることもあり、家族も応援してくれています。多少睡眠時間を削りつつも、詰め込みすぎないように調整しながらやっています。

 

 

 

▲実際に松井さんが撮影されたお写真

 

 

副業をしてわかったのは、「会社ってありがたい!」

 

「副業をしている人」として社内報やテレビでも取り上げられるようになった松井さん。それを見た人から新しい依頼が入ったこともあるそうです。

 

 

松井さん
取り上げてもらえると、知名度が上がるのでとても嬉しいです。というのも、副業してみて気づいたのが、『自分で仕事をもらうことの、いかに難しいことか!』。逆に言えば、『会社に来れば仕事があるのは、なんとありがたいことか!』ということ。自ら営業しなくても仕事があるなんて、とても恵まれたことなんです。それに気づけたことで、組織に対する感謝が湧き、今まで以上にソミックの仕事にも責任感を持って取り組めるようになりました。

 

 

本業にも副業にも精を出し、充実した日々を過ごしていた松井さん。しかしある日カメラマンの仕事で挫折が訪れます。きっかけは、七五三の撮影でした。

 

 

松井さん
七五三のように小さいお子さんをお撮りする場合、カメラ技術は当然のこと、子どもの気持ちを盛り上げながら、いい表情やポーズを引き出すスキルも同じくらい必要です。ところが、自分自身が納得のいく撮影ができないことが続き、徐々に追い込まれていったんです。

 

 

距離や形を変えながら見つける、自分と仕事の関係性

 

2024年、「カメラマンの仕事は一旦休む」と決めた松井さん。趣味じゃない、仕事だからこそ、「自分自身すらも満足できない撮影」が許せなかったのです。そして一年間、じっくりと休業期間を設けたのち、松井さんはもう一度カメラマンに復帰しました。

 

 

松井さん
このご時世、何か会社以外の収入源があるに越したことはないので、休んでいる間も他の仕事に挑戦しようとはしたんです。ただ結局うまくいかなくて。そうこうしているうちに、また自分の好きな写真の仕事がやりたくなったんです。一回離れたことで、エネルギーがまた溜まったんだと思います。もう一つ、前に撮影した方からリピートの依頼が来たり、知人から依頼者の紹介があったりがちょうど重なったんですよね。『撮ってほしい』と言ってくれる誰かがいることに、一番背中を押されました。今ご依頼がある案件は、小学校入学記念や結婚式のブライズメイドなど。まずは自分が自信を持って引き受けられるお仕事から再開しています。

 

 

やってみて、辞めてみて、もう一度やってみて。距離や形を変えながら、「本当に自分が世の中に価値提供できる仕事は何か?」を深く考えていた松井さんは、実は復帰後にもう一つ新しい副業を始めることにしました。ソミックで培った電気設計の技術をそのまま活かした、他社の電気設計の仕事です。

 

 

松井さん
15年以上の経験があるので、それを活かすのが一番早く世の中に貢献できると思ったんです。やっていいかどうかを事前に会社に確認したところ、『ソミックと取引のない会社の案件なら受けてもいい』とのことだったので、今少しずつ設計のニーズのある会社をご紹介いただいています。まだ実際に引き受けた件数は非常に少ないですけどね。

 

 

生産設備は会社ごとに少しずつ仕様が違い、それを動かすプログラムもまた似ているようで少し違う。パソコンの前に座り、初めて見るプログラムにじっくり向き合う時間は楽しく、「やっぱり自分はこの仕事、性格に合ってるな」という自覚にもつながったそうです。

 

 

副業可は、職業選択の自由につながる

 

松井さんに改めて「兼業副業制度の意義」を聞いてみると、「人生を楽しくするもの」という答えが返ってきました。

 

 

松井さん
好きなことで稼げるって、幸せなことですよ。もちろんプレッシャーもありますが、逆にそれが人生のいいスパイスになる。

 

 

そもそも副業がNGだと、どの会社に属するかで収入の大枠が決まり、生活水準も決まってしまう。もちろん成果次第で昇給もあるけれど、業績や景気からも相当程度影響を受ける。そのようなあり方自体に疑問があると松井さんは言います。

 

 

松井さん
副業OKというのは『給与以外に自分で稼ぐ方法を得られる』自由がある、いわば職業選択の自由にかかわるものだと思うんです。もちろん労働基準法があるので、いくらやってもいいわけではありません。ただ副業OKであること自体は、時代の流れという以上に、『そもそも当然のこと』だと感じるんですよね。私自身、今後もカメラマンとしてスキルを磨き、被写体となってくれた方の宝物になるような写真を撮っていきたいと思いますし、ソミックでも同様に仕事を通して周囲に貢献したいと思っています。

 

 

 

 

生き方の制限を外し、収入の制限も外し、より豊かな人生へと進んでいくきっかけとなる兼業副業制度。「自分と仕事」の関係性を耕す機会にもなりながら、一人ひとりの内側にある「働く」の多様性を少しずつ増やしています。