◉この記事の概要
障がい者雇用の社員が働ける場として、2024年新しくSOMIC N1 lab Iwataに登場した「OneCafé」。定期的にlab内で働く社員の方へコーヒーを提供しながら、コミュニケーションの機会を生み出しています。このOneCafé、実は障がいのある社員の仕事の選択肢を増やすだけでなく、社会性や自主性を育む機会づくり、また社員の間に多様な人財への理解を広げることなどもその設置の目的です。(株)ソミックワンの牧田さんは現在、清掃の仕事を行いながら、OneCaféのスタッフも担っています。仕事を二つ持つことの意義をどう感じているか、心身にどんな影響があるか、そして挑戦する牧田さんを周囲はどう見守っているのか。牧田さんと、牧田さんの上司である上村さんにお伺いしました。
◉この記事の見出し
- ソミック社員のお楽しみ、月に1度のOneCaféオープン!
- まずは決まった手順を覚える。次は自分で手順をつくる
- ポスター1枚の中にも、成長と進化の跡が!
- 仕事で学んだことが、人生の役に立つように
- いつかは「地域のカフェ」にしたい!
◉お話を聞いた人

㈱ソミックワン 業務部清掃チーム。2024年入社。清掃業務の傍らで月1回オープンしているOneCaféの運営や接客にも従事している。

㈱ソミックワン 業務部清掃チーム。2021年入社。牧田さんを指導しながら、庶務業務とOne Caféのリーダーを担っている。
ソミック社員のお楽しみ、月に1度のOneCaféオープン!
静岡県磐田市にあるソミックマネジメントホールディングスの新社屋、SOMIC N1 lab Iwata。名前の通り実験的な取り組みが日夜行われているこの場所で、2024年11月、社員が無料でおいしいコーヒーを飲むことのできる「OneCafé」が始まりました。
コーヒーを提供しているのは、ソミック石川の特例子会社・ソミックワンに所属する牧田さんと上村さん。
2024年度は月に1回のトライアルオープン。社員の皆さんもオープン日を心待ちにしており、平均で100杯のコーヒーが飛ぶようになくなります。コーヒー豆は月替わりで、取材をした2月にはブースにバレンタイン仕様の飾り付けが。四季折々の演出も、カフェの魅力の一つです。
まずは決まった手順を覚える。次は自分で手順をつくる
牧田さんの前職は、美容系の接客業。化粧品の販売をしたり、お客様にエステやメイクを施したりと、お客さまと話す時間がとても楽しかったのだそうです。そんな牧田さんがソミックワンに転職してきたのは、2024年の夏。転職にあたり職場環境で重視したのは、障がいのある社員への支援の手厚さ、そして社内での交流の多さでした。
トライアル入社した牧田さんは、周りの先輩に教わりながら清掃の仕事を少しずつ覚え、その後正式に入社します。最初は古川工場で実習し、その後磐田のSOMIC N1 lab Iwataに異動。ここで上村さんの指導を受けるようになります。
自立的な仕事の練習。それは、「15分時間が余ったけれど、何をしたらいいか」に始まり、「清掃用のマットを洗う、というミッションをクリアするには何が必要で、どう段取りすればいいか?」まで、業務中のちょっとした場面で「自分で考えてみること」を通じて行われているのだそうです。
ポスター1枚の中にも、成長と進化の跡が!
入社当初から周囲と円滑にコミュニケーションをとりながら仕事に励んでいた牧田さん。カフェの初代スタッフとして白羽の矢が立ったのも、そんな姿を会社が見ていたからでした。
OneCaféは、ソミックワンが長らく「清掃や軽作業だけでは障がいがある社員のキャリアを広げることに限界がある。グループ社員と一緒に可能性を広げたい」と思案する中で生まれてきた取り組みの一つ。接客や企画の業務を通して社会性と自主性を育み、さらにはグループ社員と交流することで障がいのある社員への理解が会社全体に広がることを狙いとしています。
カフェ業務に就いた牧田さんが最初に難しく感じたのは、やはり自分で考える「企画系」の仕事。ポスターづくりや飾り付けなど、カフェをいかに良く見せていくかに頭を悩ませたそうです。一方の接客は自然体で行えたものの、お客さまの中にはコーヒーの特徴を詳しく知りたい方もいたらしく、すぐ答えられるよう産地や味の説明はいつも考えていたといいます。今では事前に豆の特徴を書いたポスターを貼っておき、それを見ながら説明しているのだそうです。そして上村さん曰く、こうしたポスターの中にも牧田さんの成長が見てとれるのだとか!
そんな上村さんの言葉に、「今思えば、初回のポスターは本当に出来が良くなくて……」と苦笑いする牧田さん。
仕事で学んだことが、人生の役に立つように
牧田さんに、清掃とカフェ、二つの仕事を持つことへの感想をお聞きしたところ、「どっちも楽しい」という答えが返ってきました。
話を聞いて、ジーンときている上村さん。牧田さんが業務にやりがいを持って取り組んでいる雰囲気は日頃から感じていたものの、それを言葉で聞くのは初めてだそうです。
いずれは牧田さんにOneCaféをお任せしていく予定だそうです。
いつかは「地域のカフェ」にしたい!
2025年3月現在、OneCaféはまだ事業化されておらず、「社内への無料のコーヒー提供」のみをサービスとして運営されています。ただ将来的には事業化し、地域文化とのコラボレーション等を通して障がい者雇用の幅をさらに広げていくことが期待されています。
新人からベテラン、外国人までさまざまな人が働くSOMIC N1 lab Iwata。まずはこうした多様なバックグラウンドの社員たちが、OneCaféの存在、そして牧田さんや上村さんの存在をきっかけに会話を始め、「ちがい」を超えてより仲良くなっていくこと。それも、カフェに期待される大切な役割です。障がいのある社員のキャリアや成長、そして周囲の人や地域のコミュニケーションの円滑化まで、さまざまなポテンシャルを秘めているOneCafé。おいしいコーヒーの香りの中からどんな物語が始まるのか、今後も目が離せません。