2025.9.1

清掃業務とカフェを兼務!多様な人財がキャリアを広げる、 SOMIC N1 lab Iwata「OneCafé」

#生きがい・働きがいの未来 #障がい者雇用における働きがいづくり
◉この記事の概要

障がい者雇用の社員が働ける場として、2024年新しくSOMIC N1 lab Iwataに登場した「OneCafé」。定期的にlab内で働く社員の方へコーヒーを提供しながら、コミュニケーションの機会を生み出しています。このOneCafé、実は障がいのある社員の仕事の選択肢を増やすだけでなく、社会性や自主性を育む機会づくり、また社員の間に多様な人財への理解を広げることなどもその設置の目的です。(株)ソミックワンの牧田さんは現在、清掃の仕事を行いながら、OneCaféのスタッフも担っています。仕事を二つ持つことの意義をどう感じているか、心身にどんな影響があるか、そして挑戦する牧田さんを周囲はどう見守っているのか。牧田さんと、牧田さんの上司である上村さんにお伺いしました。

 

 

◉この記事の見出し
  • ソミック社員のお楽しみ、月に1度のOneCaféオープン!
  • まずは決まった手順を覚える。次は自分で手順をつくる
  • ポスター1枚の中にも、成長と進化の跡が!
  • 仕事で学んだことが、人生の役に立つように
  • いつかは「地域のカフェ」にしたい!

 

 

◉お話を聞いた人

 

牧田紗衣(まきた さえ)

㈱ソミックワン 業務部清掃チーム。2024年入社。清掃業務の傍らで月1回オープンしているOneCaféの運営や接客にも従事している。

上村幸子(かみむら さちこ)

㈱ソミックワン 業務部清掃チーム。2021年入社。牧田さんを指導しながら、庶務業務とOne Caféのリーダーを担っている。 

ソミック社員のお楽しみ、月に1度のOneCaféオープン!

 

静岡県磐田市にあるソミックマネジメントホールディングスの新社屋、SOMIC N1 lab Iwata。名前の通り実験的な取り組みが日夜行われているこの場所で、2024年11月、社員が無料でおいしいコーヒーを飲むことのできる「OneCafé」が始まりました。

 

コーヒーを提供しているのは、ソミック石川の特例子会社・ソミックワンに所属する牧田さんと上村さん。

 

 

牧田さん
上司の上村さんに教えていただきながら、豆の準備や開店告知ポスターの制作、お店の飾り付け・接客などを一緒に行っています。おいしかったよ、次はいつオープン?などと社員の方に声をかけてもらえたりすると、とても嬉しいです。

 

 

2024年度は月に1回のトライアルオープン。社員の皆さんもオープン日を心待ちにしており、平均で100杯のコーヒーが飛ぶようになくなります。コーヒー豆は月替わりで、取材をした2月にはブースにバレンタイン仕様の飾り付けが。四季折々の演出も、カフェの魅力の一つです。

 

 

 

 

まずは決まった手順を覚える。次は自分で手順をつくる

 

牧田さんの前職は、美容系の接客業。化粧品の販売をしたり、お客様にエステやメイクを施したりと、お客さまと話す時間がとても楽しかったのだそうです。そんな牧田さんがソミックワンに転職してきたのは、2024年の夏。転職にあたり職場環境で重視したのは、障がいのある社員への支援の手厚さ、そして社内での交流の多さでした。

 

 

牧田さん
見学に行った際に、ボッチャの活動やクリスマス会の存在を知って、いいなと思ったんです。少しでも手厚く見守っていただけることが心強かったので、ここで働いてみようと思いました。

 

 

トライアル入社した牧田さんは、周りの先輩に教わりながら清掃の仕事を少しずつ覚え、その後正式に入社します。最初は古川工場で実習し、その後磐田のSOMIC N1 lab Iwataに異動。ここで上村さんの指導を受けるようになります。

 

 

 

 

上村さん
一つできるようになったら、もうワンステップ上の仕事をやってもらってと、牧田さんが自己肯定感を育みながら仕事をやり遂げられるよう意識して教えてきました。今は細かい指示を待たずに、自立的に仕事ができるように指導している最中です。

 

 

自立的な仕事の練習。それは、「15分時間が余ったけれど、何をしたらいいか」に始まり、「清掃用のマットを洗う、というミッションをクリアするには何が必要で、どう段取りすればいいか?」まで、業務中のちょっとした場面で「自分で考えてみること」を通じて行われているのだそうです。

 

 

牧田さん
判断が必要な仕事や場面ではまだ悩むことが多く、周りに相談しながら進めています。でも、周りの方から『任せてみよう』と思ってもらえること自体がとても嬉しいんです。それに清掃の仕事は身体を動かすので、自分の障がいとの付き合いにも良い影響を及ぼしている気がします。元気が出るんです。それに昔は夜にうまく眠れないことが多かったのですが、今は仕事で程よく疲れる分、睡眠の質も上がりました。

 

 

ポスター1枚の中にも、成長と進化の跡が!

 

入社当初から周囲と円滑にコミュニケーションをとりながら仕事に励んでいた牧田さん。カフェの初代スタッフとして白羽の矢が立ったのも、そんな姿を会社が見ていたからでした。

 

 

牧田さん
カフェの仕事もやってみないかとお声がけいただいた時は、すごく嬉しかったです。元々接客業をしていたのもあって、人とコミュニケーションを取りながら働くのは好きなんです。

 

 

OneCaféは、ソミックワンが長らく「清掃や軽作業だけでは障がいがある社員のキャリアを広げることに限界がある。グループ社員と一緒に可能性を広げたい」と思案する中で生まれてきた取り組みの一つ。接客や企画の業務を通して社会性と自主性を育み、さらにはグループ社員と交流することで障がいのある社員への理解が会社全体に広がることを狙いとしています。

 

カフェ業務に就いた牧田さんが最初に難しく感じたのは、やはり自分で考える「企画系」の仕事。ポスターづくりや飾り付けなど、カフェをいかに良く見せていくかに頭を悩ませたそうです。一方の接客は自然体で行えたものの、お客さまの中にはコーヒーの特徴を詳しく知りたい方もいたらしく、すぐ答えられるよう産地や味の説明はいつも考えていたといいます。今では事前に豆の特徴を書いたポスターを貼っておき、それを見ながら説明しているのだそうです。そして上村さん曰く、こうしたポスターの中にも牧田さんの成長が見てとれるのだとか!

 

 

 

 

上村さん
最初の頃のポスターはパッと見てすぐに情報がわかるものではなかったんですよね。例えば『何月何日にオープンしているのか』のような大事な情報が小さくしか載っていなかったり。文字の大きさや色の鮮やかさなど、色々と二人で相談しながら牧田さん中心につくってもらい、今はずいぶん良くなったと思います。

 

 

そんな上村さんの言葉に、「今思えば、初回のポスターは本当に出来が良くなくて……」と苦笑いする牧田さん。

 

 

牧田さん
頑張っていても自分だけでは気づけないことがあるので、外から見て率直にアドバイスしてくれる上村さんの存在はすごくありがたいです。試行錯誤しながらブラッシュアップして、最新のものは最大限アドバイスを反映できたと思います。

 

 

仕事で学んだことが、人生の役に立つように

 

牧田さんに、清掃とカフェ、二つの仕事を持つことへの感想をお聞きしたところ、「どっちも楽しい」という答えが返ってきました。

 

 

牧田さん
正直、トライアル入社の前は清掃という仕事に苦手意識もあったんです。でも実際にやってみると、目に見えて汚れが落ちていく楽しさや、『ありがとう』と声をかけてもらえる喜びなど、いろんなやりがいを発見しました。それに『まずはこれをやる。次にこれをやる』と順番が明確に決まっている業務なので、複雑なことやマルチタスクが苦手な私にはとてもやりやすい仕事でもありました。だから仮に清掃一本でも、自分は楽しく働き続けたんじゃないかな、と思っています。その上で、今はどちらの仕事も好きです。清掃のルーティンをベースとして、工夫を要するカフェの業務も時々ある。それが刺激になっています。

 

 

 

 

話を聞いて、ジーンときている上村さん。牧田さんが業務にやりがいを持って取り組んでいる雰囲気は日頃から感じていたものの、それを言葉で聞くのは初めてだそうです。

 

 

上村さん
牧田さんが、仕事で覚えたことを生活の中でもできるようになり、内面から素敵な女性になっていくのを見届けたい!そんな気持ちで接しています。

 

 

いずれは牧田さんにOneCaféをお任せしていく予定だそうです。

 

 

いつかは「地域のカフェ」にしたい!

 

2025年3月現在、OneCaféはまだ事業化されておらず、「社内への無料のコーヒー提供」のみをサービスとして運営されています。ただ将来的には事業化し、地域文化とのコラボレーション等を通して障がい者雇用の幅をさらに広げていくことが期待されています。

 

 

牧田さん
SOMIC N1 lab Iwataには地域の方との交流を大切にして仕事をされている方が多いんですよね。だからこそOneCaféも、地域の方、外部の方との交流を楽しめる場へとニーズに合わせて発展させながら、新たな仕事を生み出せる空間が提供できたらと思っています。私も今後いろんな案を出していきたいです。あと単純に、お菓子や甘いものも出せたら、コーヒーをもっと楽しんでもらえるかもしれないですね。

 

 

 

 

新人からベテラン、外国人までさまざまな人が働くSOMIC N1 lab Iwata。まずはこうした多様なバックグラウンドの社員たちが、OneCaféの存在、そして牧田さんや上村さんの存在をきっかけに会話を始め、「ちがい」を超えてより仲良くなっていくこと。それも、カフェに期待される大切な役割です。障がいのある社員のキャリアや成長、そして周囲の人や地域のコミュニケーションの円滑化まで、さまざまなポテンシャルを秘めているOneCafé。おいしいコーヒーの香りの中からどんな物語が始まるのか、今後も目が離せません。