2026.6.1

試行錯誤で成長する、 はたらく現場のパートナー「SUPPOT」

#製造業の未来 #生きがい・働きがいの未来 #製造業における新しい働き方づくり
◉この記事の概要

ソミックトランスフォーメーション(以下、SX)が開発した、作業支援ロボット「SUPPOT」。作業現場で発生する資材や部品の運搬を担い、作業効率を向上させる優れモノです。しかし自社工場の現場で実際にSUPPOTが活躍するようになるまでには、山あり谷ありの道のりがありました。現場のトップである鈴木課長、何度不具合を起こしても辛抱強くSUPPOTの世話を焼いた導入担当の松山さん、そして“SUPPOTのお医者さん”として改良を重ねたSXの杉浦さん。3人をはじめとした社員たちの努力があって、SUPPOTは今や既存の道具の置き換え以上の価値を発揮し、現場の省人化を実現しています。

 

SUPPOTについてはこちら

開発の裏話はこちら

 

◉この記事の見出し
  • あのSUPPOTが、うちの現場に?!
  • しょっちゅう止まって、しょっちゅう“入院”
  • シャッターを開閉して、2つの棟を自動でスイスイ!
  • 今や現場になくてはならない存在
  • 次はどんな現場へ行こうか?

 

 

◉お話を聞いた人

 

鈴木俊伯(すずき としのり)

(株)ソミック石川 下野部工場71生産課課長。1999年入社。古川工場12生産課の課長を経て、2026年1月より現職。

松山清一郎(まつやま せいいちろう)

(株)ソミック石川 古川工場12生産課工師。2015年入社。技術員で培ったノウハウでSUPPOT導入のサポート係に任命される。

杉浦桐馬(すぎうら とうま)

(株)ソミックトランスフォーメーションSUPPOT BizDev室。2020年入社。入社当初よりSUPPOTのソフトウェアを担当。

 

 

 

 

あのSUPPOTが、うちの現場に?!

 

「古川工場の12生産課でSUPPOTを使ってみてくれないか」という話が工場長から降りてきたのは2023年9月。豊岡や下野部の工場で実験的に導入してみたもののうまくいかず、次は古川工場でトライしてほしいという内容でした。当時、12生産課の課長を務めていた鈴木さんは回想します。

 

 

鈴木さん
SUPPOTの存在は一応知っていました。ただ農業用に使われるものだと思っていましたので、自分の工場に来ると聞いてかなり驚きました。SUPPOTを開発しているソミックトランスフォーメーションとも直接関わったことは一度もなく、『あそこは自動車部品に縛られずに新規事業開発をおこなっているんだよね』くらいの認識でした。

 

 

12生産課でのトライアルが始まるにあたり、11生産課で改善の業務にあたっていた松山さんが「SUPPOTの導入担当」に。松山さんとしてもSUPPOTに触るのはそれが初めての経験です。

 

 

松山さん
私は一言で言えば現場とソミックトランスフォーメーションの橋渡し役です。実際にSUPPOTを使ってみながら、起きたトラブルの内容や、現場から上がってくる改善要望をソミックトランスフォーメーションの人たちに伝え、きちんと改善を前に進めていくことを期待されていました。

 

 

そしてソミックトランスフォーメーション側の担当者が杉浦さん。松山さんを経由して飛んでくる「現場の声」をキャッチし、いわば“SUPPOTのお医者さん”的に、プログラミングから故障原因の究明、そして改善まで全てを担いました。

 

 

杉浦さん
古川工場にはこれまでも行ったことはありましたが、親しく話せるような人間関係は皆無。しかもSUPPOT自体、もともとは農業に焦点を当ててつくっていたものなので、工場への最適化は全くできておらず。正直、最初は色んな意味で『大丈夫かな?』と不安に思っていました。

 

 

SUPPOTって工場で役に立つの?使えば本当にラクになるの?誰もが半信半疑のまま、トライアルが始まりました。

 

 

 

 

しょっちゅう止まって、しょっちゅう“入院”

 

豊岡工場と下野部工場からそれぞれ1台ずつ送られてきたSUPPOT。鈴木さんと松山さんは、実物を前にして「さて、どうするかね……」と思案します。

 

 

鈴木さん
当時は機能なんてほぼついていない丸裸の状態。追従、手動操縦ができるくらいだったかな?ちなみに12生産課ではもともと人間が乗って運転するタイプの運搬車を使っていましたから、まずはそれとの置き換えができるレベルを目指そうと思いました。

 

 

早速工場を走らせてみます。走破性が強みのSUPPOT、建屋間の段差やスロープが点在する古川工場でも全くの問題なし。床が油で濡れている箇所があっても走れることがわかりました。次は走行ルートを考えて、さらに荷台を牽引できるかを試したところ、ここでトラブルが発生!

 

 

鈴木さん
台車をつけることで内輪差が生まれ、いろんなものに激突したり故障したりしたんです。この時は松山くんと二人でああだこうだと相談しながら、うまいこと床に点線をつけて、『この辺を走ればいけるんじゃないの?』と進めていきました。サーボモーターの異常も多かったです。『タイヤが横に動かない!』とか。その度にタイヤのロックを外して、みんなで邪魔にならないところまでヨイショヨイショと押していき、そのままソミックトランスフォーメーションに“入院”。最初の頃はよく入院してたよね、身体弱かったよね(笑)。
杉浦さん
農業用途の時は牽引を取り扱っていなかったもので。工場で初めてやってみて、思ったよりうまくいかなかったなと……。

 

 

松山さんは、最初の1ヶ月間を思い出して、「まるで子守のようだった」と語ります。

 

 

松山さん
10月から自動走行を始めたのですが、やたらSUPPOTが工場内で止まるんです。その度に原因究明したり、なんとか再出発させようとしたりして世話を焼くのですが、時間が食われるばかりで埒があきません。やりきれなくなり、上の人に『電動車に戻していいですか?』と聞いたらあっさりと『ダメ』って(苦笑)。『不具合の原因が何かもわからないんだから使い続けなさい』と言われました。『わかりました』と返しましたが、心はもう限界。ソミックトランスフォーメーションの人に『……これはもう使いたくないな』と言ってしまいました。

 

 

ついに出てしまった“お手上げ”宣言。それを聞いたソミックトランスフォーメーションもようやく危機的状況を察し、古川工場に常時一人、ソミックトランスフォーメーションのメンバーが入るよう体制を組み直しました。風向きは、ここから変わり始めます。

 

 

 

 

シャッターを開閉して、2つの棟を自動でスイスイ!

 

体制変更後、杉浦さんは、SUPPOTが止まってしまう原因の追求に本格的に乗り出します。

 

 

杉浦さん
SUPPOTが進めなくなる主な理由は自己位置がズレるからなのですが、調べると、そもそも自己位置を示すセンサーの数値がおかしいことがわかりました。ではなぜセンサーがおかしくなるかというと、電圧降下が起きているから。そこで元となる電源を安定させるべく、手探りで改良を進めました。
鈴木さん
電気系統にアルミホイルとか巻いてたのってあの頃だよね?あれも電源の安定のための試みだったのか……。

 

 

いろんなものを使いながら、試行錯誤の日々。タイヤをノーパンクタイヤに変えたり、バッテリーを二つにしたり、モニターをつけたりという改良も同時に進みます。週単位で姿形が変わっていくほどのレスポンスの良さだったそうです。

 

 

鈴木さん
自分が最初に、『おや?これは単なる運搬車からの道具の置き換えじゃなくて、より便利なものになるかもしれない』と思ったのは、遠隔スイッチで発進操作ができるようになった時。それまでは荷台で積み下ろしをした後、再発進させるためにはわざわざ歩いて先頭にいるSUPPOTまで行き発進ボタンを押す必要があったのですが、遠隔スイッチができたことで荷台の位置から動かなくて良くなった。小さなことですが、『これができるなら、もっといろんなことができるんじゃないか?』と想像が広がりました。
松山さん
変なところで停止する異常も導入から2か月経つ頃にはだいぶ少なくなってきて、これなら大丈夫じゃないかと私にも思えてきました。

 

 

機能面の飛躍はまだあります。12生産課の東棟での導入ののち、次は西棟でも使ってみようとなった際、2つの棟を隔てているシャッターをSUPPOT自身が電波で開けて、行き来できる機能がついたのです。

 

 

鈴木さん
シャッターを開けるなんて無理だろうと思いながらも、一応お願いしてみたら、二日後くらいに『やれそうなものを見つけてきました』と杉浦さんからお返事が。相当いろんな技術を探してくれたんじゃないかと思います。

 

 

こうして11月の終わりには西棟の社員に向けたSUPPOT説明会が開かれ、12月の頭には西棟導入。2つの棟の間は、今や普通にSUPPOTが行き来しています。

 

 

 

 

今や現場になくてはならない存在

 

序盤は難航したものの、振り返ればたったの約3ヶ月で「使える」ものとなったSUPPOT。二年半経った現在はちょうど11台目を導入するところで、これにより運搬車はゼロになるのだそうです。ここに至るまでの技術的な山場を、杉浦さんは次のように語ります。

 

 

杉浦さん
台数を増やしていく上で、一番難しかったのは交差点での交通整理です。同じタイミングでSUPPOT同士が交差点に入ると干渉してしまうんです。制動距離やセンサーの感度だけでは回避に限界があるため、どちらのSUPPOTを優先的に通すかの順位づけをして、衝突回避の仕組みを作っていきました。

 

 

ぶつかった時のデータの解析も最初はどうしていいかわからなかったと杉浦さんはいいます。ドライブレコーダーのような録画システムをつけ、それを元に再現実験のようなこともしながら、技術者たちが協力して解決に向かいました。

 

 

杉浦さん
私にとっては、初めて“お客さんがいる”という気持ちで臨めた仕事。それがこれまでとの大きな違いでした。

 

 

SUPPOTの導入によって、現場も変わりました。

 

 

鈴木さん
まず何よりも省人化が進みました。もしも今から“元の運搬車に戻せ”と言われたら人手が2、3人足りません。SUPPOTが荷物を運んでくれている間に別の仕事をして、SUPPOTがまた回ってきたら荷物を付け替えるという効率の良い仕事のやり方が定着したからです。それに現場の組長たちも、自ら『こういうところにSUPPOT使えませんかね?』『こういうルートにしたいのですが』と提案してくれるようになりました。創造的な意識が芽生えてきているように思います。

 

 

 

 

次はどんな現場へ行こうか?

 

SUPPOTは、これからどのように進化していくのでしょうか。

 

 

杉浦さん
SXにいる技術者にもそれぞれ得意分野がありますので、プログラミング、web、電気など、それぞれの強みを掛け合わせて改良していけたらと思っています。ちなみに今開発しているのは、インターネット経由でどのSUPPOTが今どこを走っているのかを見ることのできる機能です。
鈴木さん
その機能、ずっと欲しいと思っていました!SUPPOT同士の鉢合わせを減らせるし、扉を開けるタイミングも効率化できるかもしれない。何よりマップで一覧できるとなれば、管理する側も安心なんで、ぜひ進めてください。

 

 

松山さんは、SUPPOTの不具合に翻弄された日々の経験から次のように話します。

 

 

松山さん
何かトラブルがあって、工場内でSUPPOTが黙って止まっているのが一番困るんですよ。そこをアンドン*とかに『SUPPOT止まってますよ』と飛ばしてもらいたい。それが次の課題かなと自分では思っています。

*アンドン:ラインの異常、稼働状況、部品運搬指示などをランプやモニターで「見える化」し、リアルタイムに伝える管理ツール

 

 

最後に、これからSUPPOTを検討している企業に向けてのアドバイスをお聞きしました。

 

 

鈴木さん
12生産課での導入は、松山さんというサポーターがいる前提で行われています。そういう専任に近い一人を置けるかどうかが成否の分かれ道かもしれません。ちなみにその“一人”を育てるのに必要なレクチャー時間や内容を、“見える化”していくのが今後の私のテーマです。
松山さん
事前に荷量や運搬時間などのデータが揃えられている場合であれば、導入そのものは5日間くらいでできるとは思うんです。まず2日間でSXがプログラムを作り、とにかく現場を走り出させる。あとは走らせてみてからの調整や、担当者への基本的な使い方レクチャーに数日、これで合計5日程度です。ただ問題はその後です。トラブルへの対応や、工程内のレイアウトをほんのちょっと変えた時にプログラムを全て作り直す必要があるかどうかの判断、そっちの方が難しいかなと。いずれにせよ、勇気を出してレンタルから一度試してみてほしいなと思います。使い道は、それぞれの企業の課題や戦略によっていろんな広がりがあると思います。

 

 

現場をタフに率いる鈴木さん、面倒見のいい松山さん、そしてお医者さんのように診断と改良を繰り返した杉浦さん。3人をはじめとする多くの人の協力でSUPPOTは無事に工場の「仲間入り」を果たしました。

 

現在SUPPOTは建築・土木工事現場や工場・施設内物流などで活用が広がっています。これからも日本中のあらゆる“現場”で働く人を助けるべく、SUPPOTは元気に進んでいきます。